大学の講義始まる日──今日は、キョコの高校は休校日らしい。創立記念日だとか?というわけで、キョコが大学の講義を受けてみたいってことで、こっそり紛れ込むことになった。 この講義『古典と現代の小説』だが、いかにも大学という感じの、段々の広い教室でやる。だから、大学外から講義を受けに来ても分からない。 キョコはこの大学を受験するつもりらしい・・・?この講義は、健も晶も受講しているため、4人一緒にいる。一緒というか・・・同じ教室内にいるだけで、いつもは3人で受けていたが、キョコが来ることになって兄妹と俺とキョコ、別れて受講中──とは言っても離れて座っているというわけではない。 「兄妹で仲良いな」 晶の事となると見境なくなる健。傍から見ても入り込めない世界を作り出してる気もする。2人でいる時なんか特に、だ。シスコン?って言うくらい、晶のことを気にかけていて、晶の現在の彼氏の小野君に迷惑かけてないといいのだが・・・。 「いいことですよ〜。兄弟がいないから羨ましいなって思います・・・」 「俺もいないけどな。兄貴か妹が欲しかった」 「私はお兄ちゃんかなぁ・・・。最初せんせーと会った時はお兄ちゃんって感じだったんだよぉ〜」 一人っ子なのに甘え上手。多分、ずっと欲しいと思っていたからだろうか?俺は特に甘えたいとか言う願望はないが、もし兄がいれば、結構甘えていたんではないかと思う。勿論、キョコにこうして甘えられて悪い気はしない。結構、兄肌(?)なのかな? 「ん?どうした?」 キョコが机に半分隠れるようにしている。 「その・・・」 キョコが目を向けた先には・・・。教授がこちらを睨み付けていた。少しうるさかったようだ。 「──どうだった?」 いつも通り90分の講義が終わった。今日はこの講義が終われば何もないので、俺とキョコ、それに健と晶を加えた4人でどこかに遊びに行こうということになった(晶はもう1つあったのだが、出席をとらない講義だからとサボったようだ)。 「難しいような・・・。でも、面白いって思ったー」 「ならよかった。って言っても、いつもはそんなに面白くないな」 「え?そうなの?」 本当に楽しかったようだ。初めての経験だし、特に意味もないのにノートを一生懸命とっていた(その前にちゃんと勉強する気で来ていたのに驚いた)。 俺は別にいつも通りにしていた。キョコは一生懸命ノートとってるから、あまり話しかけないようにしていたし、健のところは最初に言ったとおり。キョコがいる分ちょっと楽しかったかな。 「これからどこ行くんですか?」 「健に任せてる」 勿論、分かっている。健が行くと言えば、 「ほら、ついたぞ」 「健くん?」 「はい?」 「お前は実の妹を何しようというわけだ?」 目の前には『LOVE』と書かれた建物。 「お兄ちゃん・・・」 晶も呆れた様子で健の肩を小突く。キョコは? 「あ、その、え、あ、うえ?ほ、えあ・・・・・・」 誰の目にも明らかに動揺していた。 「あ、キョコちゃんは初めてなのか?こゆとこ」 「いや・・・その・・・」 「健、やめてやれ」 「はーいはい。分かってますよーだ」 分かっててあえて聞くこいつが時々むかつく。キョコがラブホテルなんか使ったことがないのは分かってるんだ。その、なんていうか、キョコの家には誰もいないわけだから、そこを使っていたということだ。俺はまだだけど・・・。 俺がキョコを抱くことになったら、ここでするのだろうか?やっぱりキョコの所で、となるのだろうか?多分、キョコの方が落ち着くだろう・・・。考えてたら、どこかが元気になってくるんだが。キョコにはまだ見られたくない。 「ん?」 健が耳打ちしてきた。 「て・・・てめぇ」 「まぁ、ガンバレや」 俺の手に何かを握らせると、晶を連れて行ってしまった。手をあけると・・・、 「1・・・2・・・4千円?」 「あ、私にも・・・4千円・・・」 晶が渡してくれたらしい。これは、なんだ? 「キョコ・・・さっきな、健が・・・」 「・・・えっ!!!」 もう恥ずかしくてしょうがないという風に顔を赤らめるキョコ。俺も言ってて恥ずかしい。 「思う存分抱いて来い」 って・・・・・・。 「・・・入るのか?」 「せ、せんせーが決めてよ・・・」 「金・・・もらっちゃったしな・・・」 「わ、私はちゃんと返しますよ・・・」 「つ・・・使うってこと・・・だよな」 陳腐な会話が続く。というか、こんなホテルの目の前で立ち止まっている方がよっぽど怪しい。早く決めなければ・・・。 「う・・ん・・・」 目の前にすると決心が揺れる。勿論、利用したことがないわけではないが、来るつもりで来ていたし、料金も自分で払っていた。健たちから演出されて・・・なんて、嫌だ。 「キョコ」 「は、はいっ!」 緊張しすぎだ。俺も、やっとのことでしゃべってる。もう、普通に声なんて出せない・・・。そっと、キョコに耳へ・・・。 「こういうところじゃなくて、落ち着くところ行こう」 耳元で囁いた。続けて・・・、 「キョコの家とか・・・あそこが一番落ち着く・・・」 「えっ・・・」 照れているのか?さっきの恥ずかしさとは違う。嬉しそうだ。 「あの・・・ね。せんせー」 「うん?」 キョコも俺の耳へ・・・。 「『準備』してあるんだよぉ」 そして、ちょっと後ろにピョコンと跳ぶと、「せんせーのために・・・ねっ」 「行こっか」 自分から手をとって歩き始めた。すっと気が楽になった。キョコも同じだったのだろう。あのホテルの前の独特な雰囲気に耐えられなくなった・・・というのが正しい。もうここからはいつものペースだ。 ・・・いつもの、とは考えてない。『準備』が何かが気になるが、恐らくそのようになるんだろう。・・・そのように?キョコもそのように・・・、そのつもりで? 期待に胸が膨らむ。と、同時に、変な鼓動が脈打つ。元々、そんなに恋愛に熱くなる方ではない。雰囲気がよければ事を成して、そして、何もなかったように日常に戻る。それを繰り返し繰り返し・・・。詳しいことは覚えてない。相手の名前と、どんな顔だったか、声だったか、どういう声で喘いでたか・・・。どこへ行ったかだとか、そういうのはほとんど薄い。もしかしたら、セックスフレンド?って健に突っ込まれたくらい、カラダを求め合ったことくらいしか覚えてない気がする・・・。ちゃんと『彼女』としていたが、しばらくたつと、会うとほとんど、お互いを求めてばかりいたと思う。 キョコに話したこともある。昔、付き合ったことがある女の事。こんなことがあった・・・って。それでもキョコはこう言った。 「私は、せんせーの事好きだから」 それだけ言うと、もう次の話に移っていた。この言葉でじゅうぶんだった。幸せだ。 ─あっ・・・ っという間に、キョコの部屋まで来た。特に何ともない会話をして、電車に乗った。その間に母親には、今夜は帰らないかもしれない旨を伝えた。もう、何が起こるかは想像できる。もう、キョコを抱くことになろうということは、自然の成り行きだろう。 これから、階段を上がり(3階)、キョコの部屋に行き、そして・・・、夏休みにはよく見ていたあの・・・ベッドで・・・。 「入り・・・ましょう」 キョコがそっとドアを空けてくれた。そこには・・・・・・ |