ひと夏の家庭教師



『ひと夏の家庭教師』


第6話






帰り道、電車の中でも歩いてても眠りこけてて、家に帰って寝たことも記憶があまりなかった。でも、これだけは覚えてる。キョコからメールが来ていた事を・・・

朝、起きて確認したらちゃんと来ていた。「お疲れ様でした☆」一言だったが凄く暖かいなって思った。今日も頑張れるぞ。



 「って今日何も予定ないし!」
・・・健に突っ込まれると何かムカつくんだが。
「俺の回想に突っ込まないでくれ・・・」
「ていうか、俺の前で突っ込まれるようなことしてるからだろ」
正論だがムカつくんですけど。確かに俺も悪いけどね。健が突っ込まないわけないんだから。
「うるさいな・・・。今からあるんだよ!」
「ほーーーーーぅ?」
この瞳だ。「疑ってます」って言わんばかりのこの瞳。分かってるよってことだろ?見栄張ってること。こうやって夏休みでも毎日のようにつるんでるんだから、高校時代から、だからお見通しだよな。
「お前んち来たの久しぶりだから、なんか新鮮だな」
謎だ。
「ゲームでもすっか?久しぶりに格ゲーで燃えようぜ」
「ああ、いいよ。負けても知らないからな」
「おお?俺に勝てるとでも?」
実際、五分五分なんだが。

「やっぱりな」
健が惨敗である。そりゃ、俺は暇な時間は一人でやったり、近所の後輩とやったりしていたのもあり、健はずっとやってなかったのもあり、俺が余裕で勝った。
「お前強くなったな」
お前が弱くなったんだよ、明らかに。
「さて、次、何すっかな」
「ブロックゲームでもする?何個かあるけど」
「あーそれ駄目だ。お前強すぎる。俺が勝てるの・・・」
俺の家のなんだから、競るのは分かるけど、勝てるのなんてまずなさそうなもんだが。
「てかよー、男2人が寄って集ってゲームしかすることないってむなしくないか?」
「ウチに来るって言ったのお前だろ」
「金ないからよー」
「昨日、何に金使ったっけ?」
分かってて意地悪に聞いてやる。
「あーうっせえなー。どうせ、スロットで3万負けましたよー」
馬鹿だよな。だから、負けが混んできたら止めろって言ってるのに。学生で3万マイナスってのがどれだけ痛いか、よく分かるだろ。
「まあ、金を使わない楽しみ方ってのもあるし、ちょっと行こうぜ」
多分、俺に飯でもおごらせる気なんだろう。


 飯をおごった後(ハンバーガーのセットだったが)、ぶらぶらと歩くことにした。年下にも年上にもどっちも興味ありの健、今日は・・・
「いいねぇ、制服は!」
お目当ては女子高生みたいだ。分かってたけどな・・・。前はOLのお姉さんに声かけてた。不思議と話が出来てるから驚きだ。
「今日はどんな子が引っかかるかなー」
何を期待してんだか・・・。年下引っ掛けて、飯代を俺に集って・・・。OLさんにはおごらせてたか。俺もおごってもらったから文句は言えないが・・・。
「おっ!カワイイ子発見!2人組だから2対2〜〜〜。来たよ来たよー!」
「はぁ、分かったから、声かけるんならかけて来い」
「出動!」
止めても聞くわけがない。

 「ねぇねぇ、これからどこ行くの?」
健がナンパしてる最中は、遠くで他人の振りをして待つ。なんだかんだ言って、同類に見られたくないから。
「やった成功だ!」
良かったな健・・・・・え?!
「きょ、キョコ?!」
「せんせー?!」
そこにいたのは紛れもなく、キョコと以前、キョコを彼氏との待ち合わせに使っていた友達だった。
「せんせー?ってことは・・・、この子が例の子?」
健は、俺とキョコをキョトンと交互に見つめた・・・





第7話