・・・で、なんで健がナンパした女子高生がよりによって知り合いなんだ?キョコなんだ? 「へぇー、キョコちゃんねー!かわいいじゃないかー。聴いたとおり、いや、それ以上だな!」 「い、いやぁ〜」 俺が見たところ、気まずそうに照れる。いつも元気印(死語だろうな)のキョコもこの時ばかりはどうしていいか分からなさそうだ。というか、いきなりすぎてビックリしたままだろう。俺もどうしたらいいか分からない。一応、友達の真里(?)というらしい、名前は覚えてなかったが──と話をしている。キョコと話したいのだが、健が独占してしまっていて、会話に入れない。 「何って名前なの?」 ボーっとしていた。真里と話していても上の空状態だった。 「あー一応・・・」 「キョコも言ってるし、『せんせー』でいいかな」 クスクス笑いながら言う。 「任せる」 「あはははは。その素のキャラが面白いね。キョコの言ったとおり」 「あー、よく言われる」 至って素なんだが、何故か他人には面白く見えるらしい。どこが面白いのやら・・・。 「うちの彼氏さんとは大違い。すーぐ本気で怒るんだからあいつ」 誰が聞いたよ彼氏のこと。暇だからいいけど・・・。チラッとキョコに目をやる。・・・なんだ、普通に楽しそうに話してるじゃないか。心配(?)する必要なかったな、うん。 「なーに、違う方向見てるの?」 「あ、いや、なんでもない。そうそう、時間、時間見てたん」 「そっちには『せんせー』のよくご存知の女子高生と『せんせー』のお友達しかいないみたいだけど?」 「ええ、い、ああ?」 窓際席だった。 「これからカラオケでも行くかー!」 健の提案である。「女子高生とならカラオケが一番!」と健氏は語る。俺も断る理由がないので、ついていく。なんだか、Wデートみたいな感じだな。多分、健はそのつもりなんだろうが・・・。 「そういえば今日彼氏は?」 真里とペアというのが決定的になってきている。キョコと話したいのに・・・。 「バイト。あいつ、いっつも『バイトが忙しくて会えない』って言うの!そういうときにナンパとかあったら、発散代わりについてくね」 そこまで怒ってる様子はないけど、内心辛いものがあるだろう。ちょっと同感。 「勿論、たまに寝ることもあるけど」 「ぶっ!」 噴出してしまった!それって浮気だろ! 「まーさかー、寝たって言っても一度だけよ、浮気は」 「そ、それでも一度でもしたなら・・・」 「まー、そん時バレてねー、かなりウルサク言われたし、叩かれたし。だから懲りた。今は遊ぶくらいじゃない?こうやって」 「そ、そっか」 「でも、やっぱり辛いねー。触れたい人は言い訳作って会えないって言うし、どうでもいいナンパさんには幾らでも誘われるし。はー困った困った」 それって半分は原因君だろって突っ込みたくなったが、やめておこう。第3者が首を突っ込む問題ではない、が、 「久しぶりに浮気しちゃおーかなー」 「はぁ?!」 すると、耳元で囁いた、 「『せんせー』とっ」 何も言えなかった。というか、動けなかった。 「面白いなーせんせーは」 ちょっとだけキョコ以外の人に『せんせー』と呼ばれることに違和感がを覚える。当たり前だが、この真里という子の『せんせー』ではないのだから。それ以外もありそうだが、分からない。 「あら、何か迷惑そうだねー。私じゃ不満かしら」 今気付いた。この子の高慢なところがちょっと苦手だ。何が言いたいのか時に全然分からない。キョコは、何でもはっきり言うから、好感も持てるし・・・って良く考えたら、この真里って子、健の好みじゃないのか?なのに何故キョコにそんなに突っ込む。というか何で俺はキョコの事ばかり考えている。まさかそれを知ってこの真里は、色々突っ込んでるのか?どうなんだろう・・・。 「何ぼ〜〜っとしてるんですかーせんせー!」 「あ、いや、なんでもない」 「まさかー」 まさか、ってキョコのこと考えてたのバレた?いや、バレててもおかしくないが、場には、キョコ本人もいる、健もいる。・・・・いや、健は半分くらい知ってるだろうが。 この後、カラオケで何を歌うか、の話になる。俺は前も言ったがそこまで率先して歌うほうではない。聴いてる事が多い。でも、順番で回ってくることがあるが、そういう時は割りと辺り触りの無い曲を歌う。無難なってこと。曲のレパートリーは広くなく狭くなく、と言ったところ。 「せんせー」 キョコだ。今日初めて会話をする気がする。 「ちょっと、抜け出さない?」 今は、健が熱唱していて、真里が聴いている。次は真里の番らしいから、大丈夫だろう。俺は曲を入れていない。 歌ってる健に目で合図して、外に出る。気付いたかどうかは確認しなくてもいいだろう。奴は歌に必死だ。 「どうした?急に呼び出して」 「今からウチに来ません?」 「え・・・?」 するとキョコは、俺の手をとって歩き出した。 |